【1巻レビュー】すばらしいバトルシーンとコメディが融合!漫画「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定 ~やだこの生贄、人の話を聞いてくれない~」の魅力をネタバレ込みで徹底解説!

生贄少女が邪竜に食べられるというインパクトあるシーンから物語が始まる「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定 ~やだこの生贄、人の話を聞いてくれない~」は、「主人公のドラゴンが弱い」という異世界系漫画では珍しい設定のコメディ作品として注目を集めています。今回は、登場人物や世界観等の魅力を紹介します。

齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定 ~やだこの生贄、人の話を聞いてくれない~(1) (ガンガンコミックスJOKER)

主人公の竜は実は草食で・・・

物語が始まって数コマでいきなりの暴露でした。強そうで格好良い見た目なのに主人公の邪竜様は肉系は基本ダメな「草食」だったのです。人間に邪竜と呼ばれているからどんな悪い事をしてきたのかと思えば「人に見つからないように5000年間、草だけを食べてきただけ」だったのです。唯一の特技として「相手の強弱を見極める眼力」しかないと自分でも発言している通り、争い事が嫌いな平和なドラゴンなんですよ。大きい体と厳つい見た目のせいで勝手に「魔王軍の幹部」だと勘違いされていますが、実際はかなり弱いドラゴンです。


「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定 ~やだこの生贄、人の話を聞いてくれない~」で主人公の邪竜様より主人公っぽい能力や発言をしているのが人間の「レーコ」です。魔王討伐の対価として生贄になるための邪竜の住処まで1人でやってきた少女です。可愛らしい見た目とは異なり「中二病全開」の女の子となっています。邪竜の発言を全て自分の都合の良いように解釈したり、突拍子もない発言も多くいつも邪竜を困らせたりツッコミを入れられたりしています。


草食でレーコを食べられない邪竜の咄嗟の閃きで「生贄の魂を食べた」事にしてレーコを追い返そうとしますが、まさかの「眷属」発言が飛び出します。なんでも良いから村に帰そうとアレやコレやと言いくるめようとしますが、レーコは全く話を聞きません。村まで送り届けた際に村人のライオットが邪竜に石を投げると本気で怒る姿を見て、ようやく邪竜は「とんでもない女の子を眷属した」という事に気付きます。

ヒロインの人間は思い込みだけで潜在能力全開放!


中二病のレーコも作品が人気を得ている理由の1つです。様々なトラブルに巻き込まれる邪竜とレーコですが、まずはレーコの中二病発言に邪竜がツッコミをするというのが定番になっています。中二病特有の痛い発言や表情に心当たりがある読書も多いのではないでしょうか。昔の恥ずかしい自分を思い出しながら、あるあると懐かしい感覚を得られるのも他の異世界系漫画作品にはない「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定」の特徴です。

「中二病」+「思い込みの強さ」が最強だと簡単に理解出来るレーコの強さも「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定」の魅力です。初登場時はただの生贄だったレーコですが、邪竜に魂を食べられたという思い込みから邪竜と一心同体になり強くなったという思い込みだけで「自分が持つ潜在能力を全部開放」してしまうのです。眷属になった直後、村を襲った暗明狼の群れをたった一撃で全滅させる程の力を得てしまいます。レーコ自身は邪竜の眷属になった事で邪竜の力の片鱗を使用出来るようになったと考えていますが、実は最初からレーコの中に眠っていた膨大な魔力が目覚めただけだったのです。

コメディー中心もバトル要素や緻密な世界観も人気!


思い込みが激しすぎるレーコですが、邪竜への一途過ぎる想いは可愛いです。邪竜以外には、ビックリするような発言ばかりしているレーコも、邪竜のちょっとした一言に一喜一憂しています。特にデレている姿は必見です。また、魂を食べられたと思い込んでいるレーコですが、肉体的な生贄になる事を諦めていない様子も物語の様々な箇所で伺えます。おまけ漫画で「ギリースーツ」の存在を知り、人参の着ぐるみを作って真顔で邪竜に迫った事もあります。

物語の7~8割がコメディ要素の「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定」ですが、バトルシーンの読みやすさにも注目してみてください。レーコが圧倒的な力で敵を倒すばかりではなく、他にも強いキャラクターが登場します。その1人が都市の軍隊長である「アリアンテ」です。意見の食い違いで衝突するレーコとアリアンテのバトルはスピーディーで格好良く盛り上がっていて、そこだけ読むと「バトル漫画でも良かったんじゃない?」と思ってしまう程のクオリティーの高さとなっています。ちなみに、アリアンテは邪竜がドラゴンではなくオオトカゲだという事を見抜いていたり、困った時には的確なアドバイスをしたりと、振り回されてばかりいるドラゴンの数少ない頼れる人物となります。

日常パートは完全に邪竜とレーコのクスッと笑えるコメディが展開されていますが、サクッとやられてしまうモンスターでもかなり細かな設定があったり、シルエット等の造形もしっかりと描かれています。また、物語序盤から「伏線かな?」と思える内容も散りばめられていたりと考察しながら読む事が出来る「作り込まれた世界観」も作品の魅力となっています。